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夕食後、屋敷にある自身の部屋へ戻ったアイリスは、用意していた防寒用のダウンジャケットを羽織る。そして髪を後ろでひとつに纏め、視線の先にあるものを見据えるかの如く強い眼差しで顔を上げ玄関に向かう。
ダリアと共に外へ出ると、門扉の側には1台の乗用車が用意されていた。以前の車は窓から突っ込み大破してしまった故、屋敷へ向かう為には新しく足を用意しなければならなかったのだ。
当初は石の力を使って現地へ赴く予定だったが、万が一ダイアンシス達と鉢合わせてしまう可能性がある為、目的地付近までは車で向かうこととなった。
「おお! アイリスは免許を持っていたのだな!」
敷地内に停めている車を前に、ダリアは紫の瞳を輝かせ、感激に頬を上気させる。念の為に取っておいた免許が、まさかこんなところで役に立つとは――。
「まあね」
予想以上のダリアの反応に、アイリスは得意げに胸を張り、どうだといわんばかりの笑みを見せた。
「でもレンタル車だから、なるべく傷つけないようにしなきゃ」
出来ることならば無傷で返却したいが、現在置かれている状況から、必ずと言い切れないところがなんとも複雑である。そして、懸念すべきことはもうひとつあった。
「あと私、あの場所がどこか知らないから道案内して欲しいんだけど、あそこまでどのくらいかかりそう?」
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