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再び車であの屋敷へ向かうには、道案内が必須である。加えて、場所を知っているのは迷子遍歴のあるダリアただ1人。既に嫌な予感しかしない。
だがそんな心配をよそに、ダリアはふふんと鼻を鳴らして右腕を体の前に伸ばし、その手にピースマークを作り答える。
「安心しろ。今度はちゃんと道を覚えているからな。2時間くらいあれば着くぞ」
彼にしては珍しく強気な発言。しかし通常で約2時間ということから、やはり前回は相当迷ったのだろう。
「なら大丈夫ね。行きましょう」
ダリアの迷子癖を考えると多少の不安要素は残るものの、取り敢えずは彼を信じることにした。
舗装されていない山道を進み続けると彼方に屋敷を目視することが出来、更に速度を落としそこへ近づく。森の入り口から100メートルほど離れた場所で車を停め、そこからは徒歩で迂回し屋敷の裏に向かう。
夜の森ということもあり視界が悪く、用意していた懐中電灯を使おうと考えたが、途中で見つかる可能性があった為、ここは五感の鋭いダリアに任せることにした。
彼の視覚を頼りに暫く進み続けると、敷地の端にある建物のドアの前に辿り着く。ダリア曰く、その遥か先に母家があるらしい。
もしかすれば、既に誰かに見られている可能性もある。緊張に身を縮こまらせていると、ダリアが口を開く。
「アイリス、その石を少し貸してはくれないか」
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