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何か思いついたのだろうか。口元に笑みを湛えた彼は、鞄に着けているキーホルダー型の石とアイリスを交互に見やり言う。
「いいけど、どうするの?」
貸すも何も、元々これは彼が持っていたものである。アイリスは鞄からキーホルダーの留め具を外すと、ころんと丸い石をダリアに手渡す。
その問いかけに対して彼はにっと牙を見せて笑い、握り締めた石を顔の横で掲げ答える。
「うむ、裏ルートを使うのだ」
彼の発した『裏ルート』という怪しげな単語の響きに、今度はアイリスが頭上にクエスチョンマークを浮かべることとなった。
ドアから真っ白な光の海を潜り抜け、出て来たのは先ほどまでいた森の中よりも暗い場所。視界の全てが闇に覆われ、四方の情報すら確認出来ない中で、アイリスは側にいるだろうダリアに問う。
「此処は?」
すると湿気を帯びた空気に混ざり、右後方から彼の低すぎないよく透る声が耳に届く。
「我が家の地下にある隠し通路なのだ。此処からなら母家まで直通で行けるぞ」
暗闇の為に確認こそ出来ないが、恐らく彼は自慢げな表情をしているのだろう。それを聞いたアイリスは、真っ暗な通路をぐるりと一望し、なるほどと相槌を打つ。
どおりで先ほどから湿気と土臭がする訳だ。加えて確かに、地下通路らしく音の反響もする。
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