決意 ‐determinazione‐

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 1  ダリアがそれに気づいた時、視界の端を掠めた何者かによって連れ去られたアイリスは、廊下の奥の闇へと姿を消していた。  必ず護ると誓っておきながら、再びの失態。自身の至らなさに、ダリアはぐっと臍を噛む。  だが、今ならまだ(かす)かに残る匂いを辿り追うことが出来る――そう思い、踵を返してドアの向こうへ駆け出そうとした。しかし一瞬にして距離を詰め、目の前にふわりと着地したダイアンシスによって道は塞がれてしまう。 「退()け」  ダリアは目の前に立ちはだかるダイアンシスに対してねめつけ、憤りと焦燥を孕んだ声色で唸る。それを聞いた彼は、ふんと鼻を鳴らし、挑発的な笑みと口調でこう返す。 「嫌だと言ったらどうする? 私を倒さねば、彼女は助けられんぞ」  どうやら一筋縄では通して貰えないらしい。奥の廊下をちらと見やり、再びダイアンシスに視線を送ると舌打ちし、ずっと気になっていたことを問う。 「……なぜ殺した」  静かに、だがはっきりとした口調で。 「なんのことだ?」  だがダイアンシスはきょとんとした表情で「はて?」と小首を傾げ、それが何に対してなのか見当がつかない様子だ。 「(とぼ)けるな。ヴェロニカまで殺る必要はなかっただろう?」  脳裏に、確と焼きついた彼の最期の姿が浮かぶ。例え自分を庇った結果とはいえ、ヴェロニカが殺されて良い道理などどこにもない。  
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