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名もなき月
今宵の月を
君も観ているだろうか
あんなに輝いて見えるのは
秋が訪れたせいなのだろう
こうなることは覚悟していたこと、君が全てを打ち明けてくれたあの日から。こころを決められなかったのは自分なりの終止符を打っておきたかったんだ。妻と娘を失った悪夢のようなあの夏に。
君への決意を盤石なものにするために……
すまない、これは言い訳だね。
転勤が決まりました
凄く遠いところです
一緒に行きます
どうか思い出を下さい
あなたとの最後の夜の
今まで君は、愛を忘れてしまったぼくに、代償を払ってまでも寄り添ってくれていた。
『我が儘にはなりたくないと思いながら、わがままでいたいなんて矛盾を抱えているの』
知らずと君の、あの日の言葉が鼓膜に響く。
あぁわかっている……
いくら後悔しても今更叶わぬことは。
最後に、
ふたりだけの思い出をつくろう。
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