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朔月
漆黒のヴェールに呑み込まれそうな朔の夜、君の言葉を思い出した。
『求めるものなんて なにもないの』
あの時君は笑っていたけどさ、ぼくはその心魂を、見極められずにいるんだよ。
わがままにはなりたくないと思いながら、わがままでいたい矛盾……
届いた言葉が妙に胸に刺さる。
年齢を重ねる度に何かに没頭する時間は減っていく。そうやって少なからず、何かを諦めながら時間を過ごすことが当たり前になると、望みは知らずと小さくなってしまうのか……いや、そうではない。
君のあの笑顔には……
念う新月、裏を返せば朔、失意の暗闇。
誰かが笑い誰かが泣く、そんな夜がまたやって来る 。
月のない夜はやけに星が近い。
一筋の流れ星を合図に、満天の星々が歌い出す。
流れた星は、誰の涙か……
夏が苦手だというのには、理由があるんだ。
君には未だ、話せていないがね。
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