1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
上弦の月
囁き
声にならない聲
喉の奥で生まれる甘い呻き
君の汗ばんだ曲線を
ぼくの指が辿っていく
少し目を細めてみる
上弦の仄かな光が
ぼくを窓辺へと誘う
洋上のグランドピアノ
君が奏でる小夜曲
波打つ欲が音となり
互いの身体に流れ込む
そうして
いつの間にか言葉は姿を消し
溜息となった呼吸を繰り返すだけ
ぼくは君だろうか……
躰の中にあった感情たちが
次から次と熱を帯び色彩の中に融けていく
君はぼくだろうか……
貌も分からぬ程に
濡れた吐息に耳を澄ませながら瞳を閉じる
そうやってぼくたちはゆっくりと
互いの温もりの中に堕ちていった
最初のコメントを投稿しよう!