上弦の月

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上弦の月

囁き 声にならない聲 喉の奥で生まれる甘い呻き 君の汗ばんだ曲線を ぼくの指が辿っていく 少し目を細めてみる 上弦の仄かな光が ぼくを窓辺へと(いざな)う 洋上のグランドピアノ 君が奏でる小夜曲(ナハトムジーク) 波打つ欲が音となり 互いの身体に流れ込む そうして いつの間にか言葉は姿を消し 溜息となった呼吸を繰り返すだけ ぼくは君だろうか…… 躰の中にあった感情たちが 次から次と熱を帯び色彩の中に融けていく 君はぼくだろうか…… 貌も分からぬ程に 濡れた吐息に耳を澄ませながら瞳を閉じる そうやってぼくたちはゆっくりと 互いの温もりの中に堕ちていった
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