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Case1. 浮気魔クズ先輩×健気一途後輩
加々美先輩は、外食でもするように浮気をする。
*
ああ、またか。
諦めとも、いっそ称賛ともいえる感情が脳天から爪先まで巡り、溜息となって体外へと放出される。今回は長くもった方だよなあ、だとか。わりと冷静に考える事が出来ている自分にも大きな拍手を送ってやりたい。俺、なんでこの人とまだ別れてないんだろう。
「ほーなみぃ」
「はいはい、なんですか」
「ん♡」
加々美先輩は、まるで外食でもするみたいにふらっと浮気をして帰ってくる。あ、あの店なんか良いな。入ってみるか。みたいなノリで。あ、あの子なんか良いな。誘ってみるか、と。
恐らく、百発百中のお持ち帰り成功記録は今でも更新し続けているのではないだろうか。ちゃんと聞いたわけではないけれど。それでも、俺だってもし女で。加々美先輩に誘われたら嬉々として着いて行くと思う。寧ろ、あの顔と声で誘われて断る女の気が知れない。
その後は、まあ、先輩お得意の口八丁手八丁ってやつで。なんだかんだと良い雰囲気に持ち込み、一発だか二発だかは知らないですけど。知りたくもないですけど。スッキリして帰ってくる。
そう、今日みたいに。
「先輩、懲りないですね」
「え~、なにがあ?」
「せめてそのツヤッツヤな唇、洗ってきて下さいよ」
子供のように唇を突き出し、甘える仕草でキスをねだる先輩の額にゆるめのデコピンを喰らわす。その、ちょっと嬉しそうな顔がマジで腹立つな。――とはいえ、結局は俺もバカなのだ。
「洗ったら、穂波からしてくれんの?」
「……まあ、考えてやらない事もないですが?」
「あー、ホントお前って最高~」
「ほら、ついでに風呂も。全部準備してますから」
「はーい、アキ愛してる~♡」
呂律の回りが怪しくなってきた所で、恒例となった愛してるのバーゲンセール。先輩は、加々美 昊という見た目カンペキ、中身最低のクズ男は。どうやら俺の事を好き過ぎて歪んでしまったらしい。
それに気が付いのは、浮気に気が付いた時とほぼ同時だった。
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