傷だらけのアイシングクッキー

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 咄嗟に頭によぎったのは、このまま里依さんが305号室に戻ったらあのメンバーの前でこの格好をするということ。あのメンバーと言いながら、気にしているのは真のことだ。 (見せたく、ない)  僕は肝心な言葉を口に出せずに最低な言葉を口走っていた。 「着替えて欲しい......かも」 「!......それって」  里依さんが俯く。小さな里依さんがみるみる小さくなっていくようだった。 (間違えた)  適切な言葉ではなかったことはわかるのに、僕の口から出たのは弁解や謝罪の言葉でもなく、304号室から逃げ出す言葉だった。 「僕はお菓子仕上げてくる」
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