傷だらけのアイシングクッキー

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(可愛い)  そう、里依さんは可愛い。一般的に見ても可愛い部類に入るのだが、気持ちを自覚してからというもの、よりフィルターがかかったように可愛いと感じてしまう。  以前の僕であればここで軽率に可愛いと告げていただろう。ここ最近ではすっかり意識してしまってそんなことも言えなくなってしまった。 (肌とか出しすぎだとも思う)  僕は強すぎる視界をなんとかするためにブランケットを彼女に手渡した。 「寒くない?」  この発言には僕の中の色んな意見を集約して、他の誰かに見せる前に着替えないかの提案も含まれている。しかし、ハッキリと明言しない行動が里依さんに伝わるわけがなくブランケットは彼女の膝の上に置かれた。 「ちょっと寒いかもです。はっ、このドリンクはお菓子......ではないですね。そうです! 私、緒方さんからハロウィンのお菓子をいただけるの、とっても楽しみにしてたんですよ!」  これは僕がお菓子の準備をしていると信じて疑わなかった目だ。勿論、今日のためにバイト後に夜更かししてまでクッキーを焼いてはいる。けれど、焼いている最中に深夜のテンションかあることに思い至ってしまった。 (好きな人にイタズラされたいと思うのは健全な心理だと......思う)
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