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一瞬、ドキリとした。
僕が彼女のことを好きになってしまったのは、今のところ彼女には伝えないつもりでいる。これはグループ内の均衡を保つためでもあり、彼女自身の恋を応援したいとまだ僕がギリギリ思えているからである。
(もしかしてーー気付かれて??)
真曰く、里依さんは変なところで鋭いところがあるらしい。それは僕も納得していて彼女を侮れない一因にもなっていた。
だとしても僕の返答は一つだ。
「何もないよ」
そう、何もないのだ。僕が自分の気持ちに気づいたところで僕達の関係は進まないし進ませたりなんかしない。
しかし、里依さんは僕の回答が信じられないぐらい不服だったらしい。チラリと覗き見た唇がぐちゃぐちゃになっていた。
「じゃあ、本気でイタズラされても文句言えないんですからね!」
「???」
里依さんは先程までとはまた違う剣幕で僕の顔を塗りたくる。
おでこに何かされているときにうっかり目を開けると真っ先に肌色が目に飛び込んできて心臓に悪かった。
(この格好でこのイタズラは良くない)
イタズラといえばぬいぐるみで脅かされるとかラクガキされるとかが良かった。いや、今回の件は確かに顔にラクガキではあるのだけれど。
そんなことを考えているとゾンビメイクが終わったらしい。
「出来ました! 完璧なゾンビです! 緒方さん抵抗しないから手錠までする必要なかったですね。さ、この手錠を外して」
そう言って里依さんは僕の手に付けた手錠を外そうとして、鍵を差し込む。しかし、捻っても捻っても微塵も動かない。小さな鍵は刺さったまま。
「手錠が......外れません」
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