傷だらけのアイシングクッキー

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✳︎✳︎✳︎ 「本当になんで外れないんですか......」  あれから15分。僕達は鍵を捻ったり手錠を物理的に壊そうとしたりと試行錯誤したが、手錠は一向に外れなかった。  暖房が要らないぐらいの室内の温度だが、少し手を動かせばお互いの熱が感じ取れるほどに近い距離だ。しかも、里依さんの左手と僕の右手が結ばれているため不恰好極まりない。 「どうしようか」 「た、助けを待つ......とか?」 「......。」  こんな状況を神倉や真に見られるのは良くない気がする。手錠で繋がれている男女の図はどう考えても健全な様子には見えない。しかし、今日は神倉も真もやってくる予定があった。なんと言っても、今日はハロウィンなのだから。 「そもそもなんで手錠?」 「警官のコスプレ用のものを貸していただきまして。だってほら、真さんとかだったら間違いなくイタズラの前に逃げちゃいますよ?」  真の日頃の行いの悪さが本人ではなく僕に跳ね返ってくるのが解せない。 (大体、真にこんなところを見られたらなんて言われるか)  それに里依さんは真が好きなはずなのだから、こんなシーンを見られることに抵抗はないのだろうか。 (むしろ真とだったら喜ばしい展開だったのかもしれないのに)  そう思いつつも、もう本心では真とでなくてよかったと思っているあたりが自分でも嫌な奴だと自覚がある。
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