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「渾身のゾンビメイクが数分で......」
「僕の顔で遊ばない」
次なる被害者を呼ばないために僕のメイクは落とさせてもらった。洗面台で見た自分の顔は真っ白なおしろいに充血したような目の周り、そして人を食べた直後のような返り血が付いていて自分でも軽くひいてしまった。見てしまった真に少し同情さえする。
(里依さんは変なところで才能ある)
褒めたいところだが、褒めるとまた調子に乗ってどこかの機会でメイクされそうな気がしたのでやめておきたい。幸いなことに利き手の右手があいていたので片手でタオルを取り、顔を拭くとすぐ近くに僕を見上げる顔に気がついた。
「あの......私のイタズラ、気に入ってもらえませんでした?」
至近距離での困った顔に文句の一つでも言いたかった気持ちが急激に萎えていく。
「いや......面白かった」
僕は本当に里依さんに甘い。
「あの、そしたら今日の私のーー」
「鍵、スペアとかないの?」
次のメイクの予定を入れられる前に今の状況を打破しなければ。僕は里依さんの話を遮って状況改善のために一歩を踏み出す。
里依さんはどうも不服そうだった。
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