自業自得のチェリー

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 ***  ああ、これはある意味で僕の失敗だった。  人が不自然に離れる時には理由があるんだ。その理由を知って改善できる場合はいいけれど、改善しようがない場合もあるし下手に話合ったら双方傷を負うケースも少なくない。  僕は彼女に避けられていると思った時点で、距離を取ってしまった方が無難だったんだ。無理に理由を知ろうとしてはいけなかった。水被りの件だって、日暮君の忠告通りにしていればきっとチャンスなんて来なかったんだろうしね。  生理的に見た目とかが気持ち悪いから、なんて理由で避けられている相手と、仲良くなんてできるはずがない。結局僕は先生に相談することしかできなくて、先生もそれ以降は“僕のために”彼女と僕を同じ班にしないようにしてくれたのだった。  で、ながーい昔話をしたわけだけど。僕が何が言いたいのかわかったろ?  さっきも言った通り。人が不自然に離れる時は理由があるんだよ。  僕が、付き合っているはずの君に内緒で引っ越したこと。携帯電話の番号とメアドを変えたこと。別れるって話さえしたくなかったこと。――本当に?君から離れた理由、本当に全部一から言っていいの?  OK。じゃあまずその煙草を消すところから始めようか。  この町、路上喫煙禁止だよ。もう十回は言ったんだけどさ。
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