自業自得のチェリー

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『先生、仲の良い人で組みたい人が多数だと思うのに、多数派の意見を無視するんですか?』  彼女ははっきりと先生にそう進言した。クラスでも優等生と名高い少女の気の強い発言に、スクールカースト底辺組(僕含む)はめちゃくちゃひやひやしたものである。そして彼女がそう言えば、そうだそうだと賛成する声がいくつも出るのも必定なわけで。  そうしたら、先生はとても良いことを言ってくれた。 『仲の良い人同士で組みたくない人もいると思うよ。でもそう言う人達は少数派だし、自分が孤立していると思いたくないからはっきりこの場で意見なんか言えないだろう。君も学級委員長なら、マイノリティの意見をいつでも無視するような考え方は改めた方が良い。多数派の意見というより、それは高松さんがそうしたいから、の意見だよね?多数派だから、を盾にしてはいけないよ』  いつもにこにこと穏やかな先生だったが、言うべきところはしっかり言ってくれる。僕は彼のことを心から尊敬していた。 『それに、仲の良い人同士で組んで、余らない人が出ないことはほとんどない。君は、余ってしまう人の気持ちを考えたことがある?』 『それは……その人がどっかのグループに入れてもらえばいいだけじゃないですか。それに、そういう状況を作る前に友達を作ればいいだけでしょ。なんで私達が配慮しないといけないんですか』 『君は強い子だから、そういうことを考えたくなるのかもしれない。でも、友達を作るというのがとても大変に感じている人もたくさんいるんだよ。僕も子供の頃そうだったからすごくよくわかる。仲の良い人同士でグループを組ませないでくださいって先生に何度進言しても聴いて貰えなくて、他の人の仲良しに入れてもらうのがつらかった。大抵嫌な顔されたり、お荷物扱いになるからね。……僕は、自分がされて嫌だったことを子供達にさせたくないんだ。君も、そういう人の痛みを想像できる子になってくれたらうれしいな』  そのあとも高松さんは口の中でぶつぶつ言ってはいたが、先生の考えが変わらないと見ると最終的には引っ込んだ。僕を含め底辺組の何人が、心の底で泣きそうになっていたかしれない。    さて、話はそれてしまったけれど。  そんな僕といかにも人気者な高松さんが話したことは殆どなかったと言っていい。そのきっかけが出来たのは、そんな先生によるくじ引きの席替えで席が決まってからのこと。僕が彼女の斜め前の席になってからだった。
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