自業自得のチェリー

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自業自得のチェリー

 僕が小学生だった時の話をしようと思う。ああ、他の女の子の話は嫌かもしれないけれど、相手と恋人同士だったとかじゃないし、恋愛感情なんかないし、小学生の時のことだから今だけはスルーしてほしいかな。  その女の子の名前は――そうだな、仮に高松さんとでもしておくことにしよう。苗字なのは、それくらい距離の遠い女子だったからだ。関係性なんてただ、たまたま同じ四年二組の生徒だったっていう、それだけしかないからね。  クラス、というか学校全体でも結構可愛い子ではあったと思う。長いさらさらの黒髪で、二つくらいは年上に見えそうなほど背も高くて大人っぽくて。結構裕福な家の御嬢さんだったこともあって、気品があった。なんというか、カリスマに近いものは持っていたんだと思う。彼女の周りには、取り巻きっぽい女友達が絶えなかった。いつも誰かに囲まれていたし、クラスでも中心的な人物だったんだ。  そんな彼女と同じクラスになって一カ月ばかりした、大体五月くらいからのこと。  彼女の、僕への態度がちょっと妙なものになり始めた。きっかけは、席替えで僕と近い席になったことだろうか。近いといっても、彼女の斜め前の席に僕がなったというだけで、隣でも前後でもない。ただ席の配置上、班分けの時は“同じ班”になったというだけだ。  ちなみに当時のクラスの先生は、ある意味で非常に公平な人だった。去年まで僕が嫌で嫌でたまらなかった“仲の良い人同士で班を作ってくださいor席を決めてください”というのを撤廃してくれたからだ。若い男の先生だったから、クラスを良くしていこうという熱意にあふれていたのかもしれない。当然、友達が多い人や、一緒に活動したい仲間がいる子からは反発が来たが、僕みたいに根暗なぼっちには最高にありがたかったわけだ。  ――うん、その表情からすると、君は平気なタイプだったんだろうね。クラスで孤立しないかどうかなんて心配したことなかったんだろう。陽キャタイプの人は大抵そうなんだと思うよ。でも僕はいつも、席替えとか班分けのたびにびくびくするような小学生時代を過ごしたんだ。勇気を持って誰かに声をかけないと一人だけ班からあぶれるし、仮に声をかけても人数がいっぱいだからと断られることも少なくない。簡単にどこかの班に入れてもらったり、当たり前のように一緒に組める友達がいつもいる人にはわからない感覚なんだろうね。  先生は自分のクラスでは、基本的に班分けや席替えは全部くじびきにすると断言した。まだ話したことのない人と話すきっかけを持った方が良いし、何より孤立する人が出ないためだときっぱりと言ったわけだ。ここで公に賛同すると僕が“孤立する側”だと自白するようなものだからできなかったけど、内心では拍手喝采ってなもんだった。  なお、件の高松さんは友達も多いし、仲の良い人同士で班を組みたかった典型だったんだろう。
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