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船上で過ごした夜以降、いまだヒートは訪れず二人はまだ番にはなっていない。
けれどパメラはデルザリオの寵愛を受け、益々美しく咲き誇る花のような華やかさを身に纏うようになった。
「幸せになるんだよ」
「嫌だわアイルーン。これからだって身近で過ごすのよ。お別れみたいな言い方はやめてよ」
「いいや。もう私の手を離れる時なんだ。その区切りだよ」
路地裏でずぶ濡れのまま膝を抱えて人目を避けて過ごしたあの時、アイルーンが見つけてくれなければパメラは今頃どうなっていたか分からない。
「アイルーン、私」
「ああぁ、そういう湿っぽいのは嫌いだよ。泣くんじゃないよ、化粧が落ちちまう」
「だって」
「あんたに泣かれると弱いんだよ」
初めて会った日にそうしたように、アイルーンに抱きしめられて頬を濡らすと、化粧が台無しじゃないかと言いながら、自分も涙を浮かべるアイルーンと笑い合う。
程なくして迎えに来たデルザリオに目が少し赤いことを指摘され、パメラはアイルーンの思いを叶えたいと笑顔を浮かべた。
国民の前に姿を現したデルザリオとパメラの姿に、囁きすらもその場から消えて静まり返るほど、その場に居た誰もがその圧倒的な美しさに息を呑んだ。
オネストルの消えた花嫁を思わせるパメラの麗しい姿に皆が酔いしれ、マグラリアとカミーリアに続く、デルザリオとパメラの婚礼に向けた婚約報告に民衆は大いに沸いた。
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