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「うあぁ……!」  普段なら決してしないオーバーリアクションで壱琉が頭を抱えた。珍しい光景に目を丸くするチカの上に、悲痛な呻き声が降る。 「ぐぅ、っ」  なんで、俺は大学生なんだ。なんで、チカより九年も早く生まれた?  なんで、コイツと同い年に……いや、せめて……。 「そうだ。せめて、二、三歳差くらいに生まれていれば、小学生同士の幼馴染として一緒に行事に参加しても問題なかったのに」 「えー? もんだいは、あるよー。同じ学年じゃなかったら、いっしょの行事に参加するのは、むりじゃん。いっちゃん、せいせきゆうしゅうでかしこいんだから、それくらいわかるはずなのにー。変な、いっちゃんっ」 「わかりたくねぇ。わかってるけど、わかりたくねぇから、可愛いツッコミを可愛く入れるのはやめてくれ」  透き通った声音が、壱琉の鼓膜を明るく震わせた。その相手に(かぶり)を振り、耳を塞ぐ。美しい黒髪が、チカの眼前ではらりと揺れた。  わかってんだよ。何をどうしたって、俺らの年齢差は埋まらねぇ。が、どうしようもない絶望が、俺に現実逃避をさせるんだ。  お前を本気で愛してるから、おかしな思考に傾く。俺の感情を揺さぶる唯一の存在がお前だから、どうしようもなくお前だけを求めてしまう。  どんなことでも冷静にさくっと、悪く言えば計算高く対処できる俺だが、お前が関わるとIQが一桁にまで下がっちまうんだ。情けないことに。
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