3/11

62人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「お前が適齢期になるまで延々と生殺しの苦行に耐えなきゃなんねぇのは、結構つらいもんがあるんだよ。だから、時間を作って学校までお前を迎えに行ってたし、社会科見学にだって無理やり付いていった。それの何が悪い!」 「ええええぇっ? なんで、そんな綺麗なドヤ顔で、ちっちゃい子みたいにイヤイヤしてるのーっ? えーと、こういう時、なんて言うんだっけ? えーとえーと……あっ、コレだ! いっちゃん、正気にもどってよ!」  知能指数が5程度しかないことを堂々と露呈した美貌の男に、愛らしい天使が縋りつく。 「チカ?」  大好きなお兄さんが壊れてしまったのかと、恐怖と心配で見開かれた鳶色の瞳が潤んでいるのを見て、現実逃避していた壱琉が我に返ることが出来た。  あと数年は続くであろう生殺し我慢大会への苦悩よりも、愛しい天使の笑顔を守らねばという使命感が勝った瞬間だ。  清々しいほどに病んだ愛情が原因でIQがバグった男に、人として最低限の理性がようやく戻ったのだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加