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「はあぁ……この、すべすべの感触、堪んねぇな。かぶりつきたい。うっかりマシュマロと間違えちまったぜっつってパックリやっても許されるんじゃね? いいと思う。いいはず……いや、だめだな。まだ、だめだ。今日のところは自制しとけ、俺」 「いっちゃん。チカの運動会ファイト! のためのすりすり、ありがとー。ばっちりとパワーがたまったから、そろそろ、おろして? チカ、入場行進に行かなくちゃ」 「何? もう行くのか? もうちょい、ほっぺすりすりしていけよ。俺のた……お前のために」 「だめだよぅ。チカ、学級委員だから、クラスのプラカード持って行進するんだもん」 「チッ。仕方ねぇな。なら、最後にもう一回だけ、ぎゅーってしてから行け」 「うん、ぎゅーっ!」  至極おかしな会話が、グラウンドの片隅で展開されていた。  運動会当日を迎えた小学四年生の応援にきたはずの幼馴染のほうが小学生にハグをねだり、挙句、保護者席でおとなしく待っているようにと頭を撫で撫でしてもらっている。しかも、その光景の原因である幼馴染は、小学生より九歳も年上。  百八十五センチの長身と、嫌味なほどに整った容貌。危険なオーラがぷんぷん漂う大学生が小さな天使と人目もはばからずにイチャイチャしていれば、おかしな、と言うよりも奇天烈な光景でしかない。
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