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「じゃあ、いっちゃん。チカ、がんばってくるからねっ」 「おう、行ってこい。また後でな」  常識的な観点を持つ人間なら、見ないふりでスルーするしかない大学生と小学生のラブイチャシーンを存分に披露した後、幼馴染たちは名残惜しげにようやく離れた。 「さて、俺も家族席に行くか……ところで、おじい」 「なんだ」 「よくも、手加減なしで背中をぶっ叩いてくれたな。チカを落としたら、どうすんだ。落とさねぇけどなっ」 「お前が正親を落とすわけがなかろう。そんなことをしたら、片手で軽くはたいて時間切れを教えてやるだけでは済まなかったぞ。今頃お前は、儂の流麗な足技で地面にめり込んで泣いているところだ」 「チッ。いい歳して物騒なジジイだぜ。こんなのに毎日鍛えられてるから、チカがどんどん武闘派になってんだぞ。俺の天使を返せ」  壱琉とチカがようやく離れられたのは、一般常識を持ったチカの祖父の実力行使のおかげだった。  実は、祖父による介入がなければ、壱琉はチカを抱いたまま、しれっと入場口まで運んでやるつもりでいた。  が、愛する幼馴染との触れ合いタイムを強制的に削られたことで、壱琉の脳内には新たな野望が生まれる。 「仕方ねぇ。保護者参加競技で活躍した後に、この消化不良を補填するか」  午前の部の最終競技、生徒と保護者がペアで参加するパン食い競争で一位を取る予定なのだが、その活躍の褒美をチカから貰うことが、今、壱琉の中で決定した。
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