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「ほっぺすりすりの代わりになる褒美と言えば、アレしかねぇ。ふふっ。おじいが背中をぶっ叩いてくれたおかげで、合法的にゲットできるって寸法だ。貴重な、チカからのほっぺチューを」  生徒と一緒に参加する競技での活躍に対して、当の生徒から、なぜ褒美(キス)を貰えると思えるのか。運動会は生徒のためにあるのだから、立場が逆だと、なぜ気づかないのか。  とことん自己中心的な俺様思考であるが、颯爽と保護者席に向かう長身からは妖しいフェロモンだけが周囲に放たれているものだから、壱琉の残念な妄想は誰にも窺えない。  それは壱琉にとっては幸いであり、また、その歪んだ愛情を一身に受けているチカにとっては災難でしかないと言えるのだが。 「いっちゃーん! 入場行進してるとこ、一枚でいいからお写真とってー! クラスのみんなといっしょに!」 「任せとけ。連写で撮りまくってやる。お前が九割、その他大勢が一割の黄金比率アングルだな。了解だ」 「いっちゃんとはお昼休みにいっぱいとろうねっ。大好きーっ!」  壱琉の歪な盲目愛に対し、純真無垢な『大好き』だけを返すチカであるから、災難どころか、お似合いのカップルなのである。  現時点では、年齢差がネックなだけで——。
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