ニャーがいて

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「おとうさん、おかあさん。わたし、ネコちゃんかいたい!」 「ん"~~」 私が6歳頃からの両親との会話。 年に何回かするそんな会話が私が10歳の時に変化した。 「ネコ、飼いたい!大事にするから」 「‥‥命なんだから、お世話がイヤだって言えないよ。分かるかな?約束できる?」と、お父さんが言うので私は力強く「うん!約束する!」と言った。 「じゃぁ、お父さんの知り合いでこの間仔猫が生まれたみたいなんだ。見に行けるか聞いてみるよ」 「うん!」    それから2日後。 「仔猫、明後日の日曜日に見に行ってみようか」 お父さんからそう言われた私はあまりの嬉しさに飛び上がり喜んだ。 約束通りに私とお父さんとで、ネコを見に行った。そこには4匹の小さなネコがいた。 みんな可愛くてフワフワだった。その中で1匹だけ私にトコトコと寄って来たこがいた。 耳だけ真っ白でほかは真っ黒なネコ。 「珍しいね。そのこ誰が来ても全然で。ビビり君でね~」と、お父さんの知り合いのおじさんが言った。 「そうなんだ~」 私はそーと、しろみみ君の頭を撫でた。 しろみみ君は嬉しそうな顔をした気がした。 「お父さん、このこかわいいよ!」 「うん。でも、きちんと準備しないとね。準備もしっかりできる?」 「うん!」 お父さんさんは知り合いの人に何か話をしに行った。私はその間、しろみみ君と遊ぶ。 やっぱり、かわいいな。 その日はそれだけでしろみみ君とバイバイした。 それから、お父さんとネコ用の物を買ったり勉強にと本も買ったりと色々と準備をして 3日後に私とお父さんはもう一度お父さんの知り合いの家に行った。 もちろん、しろみみ君に会うために。 しろみみ君とはその日から家族になった。  あれから15年。 名前はそのまま、しろみみ。 病気もせずに立派なおじいちゃん猫になった。 しろみみは、うちに来てしばらくした頃からしろみみ独自の行動を発揮した。 父に対しては、父が新聞を広げると父の膝の上にチョコンと座る。 母に対しては、母が洗濯物を干そうとすると母の後を追っては横にチョコンと座る。 兄に対しては、兄が起きる朝の6時45分にアラームがなる。それを聞くと必ず兄の部屋の前にチョコンと座る(出てくるのが遅いとニャーと鳴くこともある) 私に対しては、私が出掛けると玄関まで来てチョコンと座る。私が「行ってきます!」と声をかけると「ニャー」と必ず返事をし、帰って来た時も音で分かるのか玄関を開けるとしろみみがチョコンと座って待っている。 父の起床時も、母が帰宅しても、兄が新聞を広げても、私が洗濯物を干そうとしても、しろみみは来ない。しろみみなりの思いがあるのだろうなとみんな思っているから、しろみみがチョコンといると嬉しくて頭を撫でる。 しかし、今日で私に対してのしろみみの日課の行動がなくなる。なぜなら私は結婚してこの家から離れる事になったから。 夫も猫好きな人でそれが縁で今に至る。 新居は家から3駅ほどの距離のマンション。 この辺は田舎なので3駅と言ってもちょっと距離がある。だけど、休日は顔を出したいなと思う。夫は快く承諾してくれたから嬉しい。 ずっと一緒だったしろみみと離れて暮らす。 母にしろみみの写真や動画を送ってと頼んでいる。しろみみの毎日を離れていても見ていたいから。    私は最後の荷物を持ち玄関で両親と兄に挨拶をした。 「じゃぁ、またね。行ってきます」 「気を付けてね、恵那」と母の言葉に私は少し涙目になりながら頷いた。それから私の大好きなこにいつものように言った。 「しろみみ、行ってきます!」 しろみみはいつもと変わらずに玄関にチョコンと座り「ニャー」と鳴いた。 私はしろみみの頭を撫でた。 初めて会った日の事を思い出した。 やっぱり、おじいちゃんになったなと思った。 でも変わらずに私の大好きなこ、しろみみ君。 行ってくるね。 私が帰って来たら変わらずに玄関でチョコンと待っていてね。
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