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名もなき海辺の村。
村民達は漁で生計を立てている。
山もあるので山の幸も豊富で、村は裕福な方だった。
裕福でも村民は純朴で信心深い。
その村民がしっかりと教えを守り、熱心に信仰しているのは、海の神…竜神である。
そして人々は竜神との約束をしっかり守り続けた。
その約束は掟だった。
一つ 竜神の定めた日より前に漁をしてはならない
一つ 竜神の定めた日より前に魚を食してはならない
曖昧な掟だったが村民は、竜神の定めた日より半年前にそれらを固く守ると海に誓いを立て、竜神はそれを了承した。
この掟を守るからこそ、竜神は海の恵みを与え、民の生活も潤っていた。
竜神は他にも真水の流れる川も村に造り、民の生活を助けた。
「漁の解禁日だ!竜神様のお使いの海亀様が現れたそうだ!」
村民の男達は歓声を上げながら、自分達の舟に乗り込んで、沖合いへと漕ぎ出す。
村民の女達は干物にする時に使う台を出したり、炊き出しの用意をしたりと、皆が笑顔で甲斐甲斐しく働いている。
「今年も掟は守られた。ちゃんとご褒美をあげなくちゃね。だけど、そろそろ反抗期の子が現れそうだね」
薄暗いどこかの洞窟で、髪が異様に長い青年が口元をうっすらと歪ませていた。
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