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村に帰ってきた男達の舟にはたくさんの魚が積んであり、女達は干物作りを始めた。
男達は酒盛りでどんちゃん騒ぎだが、決して魚は口にしない。
『竜神より前に魚を食してはならない』を忠実に守っているからである。
竜神が誰よりも先に食べる魚は漁師達が一番最初に釣り上げた魚で、漁師達は最初に釣り上げた魚は村に帰る時に海に投げ入れるのが決まりだった。
竜神は生きた魚を好んで食べることはしない。
死んだ魚を食べて、自分の力の糧にして、海の命を循環させていく。
そう信じられていた。
「そもそも竜神様が死んだ魚を食べているのを誰か見たのかよ?」
「お前、罰当たりなこと言うな!竜神様は神様なんだから、お姿は見えねぇんだよ!」
「いるかどうかも分からない神様を信じても意味がねぇ!そんなにありがたい神様なら、姿を拝みに行ってやる!」
「やめとけ!罰当たりなことするな!」
しかし、青年は仲間の声を無視して、竜神の住むという洞窟へと足を向けた。
青年は純粋に知りたいだけだった。
その気持ちは竜神でも理解しただろう。
ただし、真実を知るにはそれに見合う代価が必要だとは、竜神以外は知る由もなかった。
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