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「お前何か雰囲気変わったな。大人っぽくなったっていうか、色気付いたというか」
「……そう? そんなに気を使っているつもりはないんだけど」
髪を触ったり、首を傾げたりと本当にわかりませんと言わんばかりの言動に何だか肩透かしを食らった。
由夏は再び望遠鏡を覗き込んだ。今度は月を見せてやろうと望遠鏡を調整しようと近づいた。
「今度はこっちを覗いて」
すっかり由夏も天体観測の虜になったのだろう。期待に胸を膨らませているのは見てとれた。
「星哉くんはこうして一人で見るのが楽しいの?」
「前にも言っただろう? 友達がいないんだって」
僕は高校生活に馴染めなかった。学校が楽しい、楽しくないとかそういう理由じゃなくて自分の人生に対する価値観みたいなものが同年代とかけ離れている事に中学生の時に気づいて虚しくなった。
周りはゲームやカラオケ、彼女を作ってデートとか目先の事を楽しんでいた。僕には何かをするにしても理由が自分で見つからない限り、行動を起こせない性格だと気付いた時、周りには誰もいなかった。
ただ、それだけの事。
「そうだよね、友達がいたって結局、裏切るからね」
その夜、メンチカツのお爺ちゃんが泣くなったと聞いた。
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