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 親は子を選べないと言うけれど、子も親を選べない。    私の家庭環境は最悪だ。父親は若い女と浮気をして、私が小学生の時に両親が離婚。  一人娘の私を嫌々引き取ったであろう母親は、中学生の時に見かけた父親より若い男と出かけてから帰って来ない。  見るに見かねた母親の両親、つまり祖父母に引き取られた私の不幸はこれで終わりではなかった。  その祖父母の家に私の居場所はない。居場所をくれないのなら、私の事なんて海に捨ててくれたらよかったとつくづく思った。  別に恨んで夢に出たりしないのに。でもそんな贅沢はとても言えない。それにいつも機嫌悪そうな二人だった。  いつも不満そうでテレビに向かって政治家の悪口を口にして、時には関係ないのに二人で私に当たってくる。  食事は先に祖父母が食べて、残りが私の食事。残りがなかったら食事にありつけない始末。  私に与えられた空間は納戸の三帖だけ。勿論、納戸だから窓なんてない。横になれば納戸は私の体であっという間に埋まる。  高校に行けば何か変わるだろうかと思っていたけれど、そんな事はなかった。  中学生の時から私の事を周囲は認識してくれていなかった。教室にいても誰からも声はかけられないし、先生達もそうだった。    まるで空気の一部のような存在。私から何か声をかければ、隠そうともしない嫌悪感を示す同級生達。  何がきっかけだったかもわからない。多分、彼女達の気分を損ねたんだと思う。  ある日を境に私の高校生活に変化が起きた。普段以上の疎外感。  私物が無くなる。殺人予告や罵詈雑言が書かれた紙が埋め尽くされたロッカー。  臭い、汚い、ブス。大体、そんな言葉が紙面を埋め尽くされていた。  言い訳はいくらでもある。祖父母は風呂に入らせてくれない。衣類や下着を祖父母は当然、買ってくれないから替えがない。  洗濯機は電気代がもったいないと使わせてくれないから、夜に近くの公園に行って洗っていた。  最初は惨めに感じていたが、次第に当たり前になっていた。ブスに関しては親の遺伝だからどうこうしようがない。  見て見ぬ振りをする大人達。気づいていても気付かない振りをする大人達。  私だって相談した。相談したけれど、大人達は大した事ないと言う。  次第に迷惑をかけてはいけないと自制心が働いた。私が気に留めなければ大人達に迷惑を掛けないのだと。  アルバイトをしてお金を稼ごうと考えた事もあったけれど校則があって出来ない。    一度だけバレずに倉庫の整理のアルバイトに行った事があったけれど、見た事ある同級生男子がいた。  見つけた途端、怖くなって逃げた事があった。その男子は今でも働いているのだろうか。  私が揚げ足をとる事も出来たけれど、心が痛む。   こんな事は中学の時と一緒だった。私に責任があるならちゃんと教えて欲しい。  私の言動が気に喰わないなら改善する努力をする。失礼があるならちゃんと謝る。  でもそれらの原因は十中八九、私じゃない。
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