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「始まりと終わりは誰にでも平等に与えられる。先人達が長い時間をかけた考察が正しいかどうかなんて死んでみないとわからない。もしかしたら死んでもわからないかもしれない。それでも僕は、興味が尽きないよ? だって答えが欲しいから」    そう言って星哉くんは立ち上がって私に向き直った。 「……何の答え?」 「死だよ。答えがない不安を抱えたまま、夢や希望を持てと大人達は言うけれど、そんな不確かな人生に興味はないんだ」  その言葉に共感していると星哉くんは私が胸に抱えていたソクラテスの哲学書に手を伸ばした。  哲学書が星哉くんの手に渡る。 「これは借りてくよ」 「正確に言うと私が借りたものだから、借りるのはおかしいよ?」 「……そうか。まぁ、細かい事は気にするな」 「さっきから『きみ』って呼ぶの、気になるんだよな。由夏って名前、知っているよね? 次からちゃんとそう呼んで?」    星哉くんが斜面を駆け上がり、自転車に戻って行く背中に問いかけた。  自転車に跨りながら「明日返すよ」と返事を返すと星哉くんは帰っていった。    明日、また会えるんだと考えた途端、頬が熱くなるのを実感した。  もう、死について考えたくないと本能的に悟った気がした。
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