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「わたし、少女じゃないんだけど」
少女だったころなんて、もう十年以上前だ。
缶ビールをブシュッと開け、くいっと飲む。のどから胃へとアルコールが流れ、満たされていく。
くー、たまらん!
「まあまあ、そうおっしゃらずに。どうか頼みますよ」
三角帽子を被った猫が直立し、手もみしながら、猫なで声をだしている。
わたし、翌檜真歩、三十歳。魔法少女にならないか、と変な猫から現在絶賛勧誘されまくり中である。
「だいたい、なんでわたしなわけ?」
ワンルームマンションの部屋でわたしはあぐらをかき、机の上でちょこんとすわる変な猫もといモッピィに尋ねる。
よれよれのタンクトップに短パン、という恋人が見たら失望されそうな格好だ。まあ、恋人のコの字もないけれど。仕事もいそがしいし。毎日がムチャぶりの連続。男にかまけている余裕はない。
そんなファンタジーとは無縁の現実を生きるわたしが、なぜ魔法少女候補に選ばれたのか。とくと聞こうじゃないか。
「暇そうだからですよ」
悪びれるようすもなく、モッピィは即答した。
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