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「あれ、タカシ。もう終わったの?」
さりげなく右手を後ろに隠しながら、タカシはへらりと笑う。
「んー、なんかひとりだと怖くなってさ。こっちで拾っていいか?」
「もちろん」
その言葉に甘んじて籠を地面に置く。そうして、彼と同じように栗を探し始めた。
アツキの栗が減っている。不思議に思って聞くと、もうノルマを終わらせ、今は自分用の栗を拾っているらしい。もはや差なんてどうでもよかった。今はただ、この企みを成功させたい。
アツキが自分の籠に栗を入れ、背を向ける。その瞬間を見計らい、タカシは彼の籠にそっと悪を忍ばせた。そして、そのまま素知らぬ顔で作業に戻る。
やった。
静かな興奮が胸の中を満たしている。これであいつは、外れを持って帰ることになる。甘美な優越感が、ずっと損なわれ続けてきた自尊心を潤した。内心上機嫌になりながら、タカシは軽やかな手つきで栗を集めた。あの重みはもう知っている。もし掴んでしまっても、落ち着いてまじないを唱えればいいのだ。
「タカシ、勝手に入れちゃうね」
「おお、サンキュッ」
馬鹿、何を余裕かましてんだよ。その親切を嘲笑いながら、自分のノルマに集中する。アツキのサポートもあり、タカシの籠はあっという間に埋まっていった。
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