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目の前にはアツキが立っている。状況が分からず周囲を見ると、籠にはいつの間にか大量の栗が入っていた。腕時計のアラームが鳴り響いている。
これ、全部俺が拾ったのか?
困惑する彼に、アツキはため息をつく。
「心配で着いてきたんだ。夕暮れに近付くと、ここに魅入られやすくなるんだってさ」
ぞっとした。もしアツキに叩かれなければ、今頃自分は時間になっても気付かずに……。考えただけでも恐ろしい。夕暮れの山の中、それも禁足地にひとりで取り残されるなんて。
「あ、ありがとう。本当に助かった!」
本心だった。今だけは純粋な感謝を伝える。
「じゃあ帰ろっか」
「おう!」
爽やかな気持ちで籠を背負う。たっぷりの栗を背に立ち上がると、ふと、背後から少年が呟いた。
「ところでさ、さっき僕の籠にアレ入れてたよね」
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