栗拾異

「僕さ、ちゃんと調べたんだよね。裏山の正しい名前知ってる？　ツブレメ山っていうんだよ」

　まるで夏休みの自由研究を発表するかのように、得意げな顔で笑う。

「この禁足地には人の目を潰すたくさんの化け物がいて、そいつらを全部ひっくるめてツブシメ様って呼ぶらしいんだ。ただの土着信仰じゃないよ。毎年そこの栗をもらう代わりに、人間側も対価を差し出すんだ。何だと思う？」

「うぐぅっ……！」

「答えはね、十三歳の生け贄」

　苦痛に涙を流しながらも、その言葉だけは頭に入ってきた。

「毎年、この栗拾いで誰かが行方不明になるんだって。別にタカシを生け贄にするつもりはなかったよ。でも仕方ないよね。そっちが殺そうとしてきたんだから」

「ち、違うっ」

「タカシは僕の憧れだったんだ。ずっと僕はタカシみたいになりたくて頑張ってきたのに……こういうことをする奴だったんだね」