栗拾異

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 翌日、選ばれた十三名の生徒は、四十名の男たちに代わる代わる背負われ、山を登っていた。栗拾いの会の人たちらしい。どの男もやけにがっしりとした体格だ。タカシはそれが少し気になった。まるで体育の先生たちに引率されている気分だ。このまま運んでもらっていいのだろうか。  緩やかな傾斜を進んでいくと、やがて開けた場所に辿り着いた。  生徒たちを引率していた男のひとりは、下ろした子供たちを集め、無言で手招きをする。 「あれが見えるか?」 「あれって……神社のやつ?」  彼が見つめる方向には、鬱蒼とした茂みの中に、小さな赤い鳥居がぽつんと立っていた。奥は日差しが遮られ、離れた場所からではよく見えない。  何だ、あれ。  その異様さは、タカシでも一瞬で理解できた。どうしてあんな場所に鳥居が。まるで別世界への入り口のようだ。  男たちは眼帯と軍手、腕時計と竹製の背負い籠を生徒たちに配布した。何故栗拾いに眼帯がいるのだろう。彼らはその意図が分からずにただ困惑する。  やがて、他言無用の秘密が子供たちに教えられた。
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