栗拾異

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「タカシ……」 「分かってるよ、やるしかねえだろ!」  短い雑草が斑模様を作る土の上に、ぽつりぽつりと栗の木が立つ、だだっ広い空間。鳥居の奥の平地では、大人のげんこつよりも大きな栗がこれでもかというほど落ちていた。普段ならば大喜びで拾い集めているはずだが、彼らは毎回おっかなびっくり手を伸ばしては、それを裏返す。  話によると、あの鳥居の奥はいわゆる禁足地で、十三歳の子供しか侵入を許されない。そこでは秋になると例の栗が落ちているのだが、時々それに似たよくないものが混ざっている。  そのと目を合わせてしまえば、見た者の目が潰されてしまう。だから万が一のために眼帯で片方の目を守り、当たりの栗をできるだけ拾ってこいということだった。  真面目にやらせるための方便だと思いたい。しかし、入った瞬間から分かった。ここは異界なのだと。漂う空気の重みからして根本的に違う。 「畜生がよっ」  タカシは泣きそうになりながら、落ちているイガグリに手を伸ばす。そして、しっかりとその重さを確かめてから、薄目でその裏側を確認した。艶やかな茶色い鬼皮が見える。いかにも旬を迎えて旨そうだった。これは外れではない。 「……よし、こいつも大丈夫」  その何かの見極め方は、持ってみればすぐに分かるとのことだった。普通のイガグリよりもずしりと重いそうだ。毎回きちんと確かめていれば、うっかり拾って見てしまうことはないという話だった。そんなもの、何の保障にもなりはしない。
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