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そう、いつだってタカシはアツキに自分の立ち位置を奪われてきた。抜かされないようどれだけ努力しても、相手はさらりと先へ進んでいく。すべてを持っているくせに、自分はたいしたことない弱者です、という風な顔をする彼に、タカシは並々ならぬ思いを蓄えてきた。
ずっと好きだった部活の女の子。必死に頑張って少しずつ仲を深めてきたのだが、なんと彼女はアツキを好きになった。悔しさを必死に押し殺してふたりを取り持ったのに、アツキはその子の告白を断った。それが、どれほど憎たらしかったことか。自分がどれだけ頑張っても手に入れられないものを、こいつは捨てる余裕さえあるのだ。
ムカつくぜ。
アツキといると、ずっと惨めな思いばかりをしてしまう。なのに、彼はいつも親鳥を追いかける雛のように、こちらへと着いてくる。だからタカシは彼が苦手だった。いい奴ではあるのだが、近くにいたくないのだ。
「タカシ、手伝おうか? 僕はもうちょっとで終わりそうだから」
その申し出が、タカシのプライドを強く抉った。
また、俺は負けるのか。
「いいよ。お前も自分のをまず終わらせなきゃだろ」
畜生。気付かれないように奥歯を噛みしめる。
せめて、この栗拾いだけは絶対に負けたくない。
惨めな自分の闘争心が、熱く燃え上がった。
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