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もう周囲には栗が残っていない。離れすぎないように注意しながら、生徒たちはさらに奥へと進んでいった。
タカシもやがてひとりになり、一心不乱にイガグリを拾っていた。体力はもう残っていない。ずっとしゃがんでいるのもかなり腰にくる。しかしもう怖がってなどいられない。あいつに負けたくない。半ば自棄になりながら、足元の栗を片っ端から籠に入れていった。
畜生、畜生、見てろよあの野郎!
目を剥いて遮二無二拾っていたその時、ふと全身に鳥肌が立った。
重い。
今手にしているイガグリが、異様に重い。さらにはウニのように、棘がわさわさと動いている。
触手が下の方から姿を現す。
それを見て一瞬、頭が真っ白になる。ついに外れを引いてしまったのだ。
「ひっ……ツブシメサマツブシメサマ、ワレラワレラ、ハラカラナリ」
動き出した栗もどきを再び沈静化するまじない。それを唱えると、触手は引っ込んでいった。
「あ……危ねえ……っ」
鼓動の激しさがその危険度を知らしめる。本当に危ないところだった。触手を見た瞬間、反射的に投げてしまいそうになった。あの言葉を唱える前に離してしまうと、一体どうなってしまうのだろう。
こんな恐ろしいもの、さっさと捨ててしまおう。
「あっ」
そう思った瞬間、少年の心にふと魔が差した。
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