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そのキャンパスノートの表紙には、
『スゥィート・メイプル・ムジク』
と、丸こい文字で書いてある。
リンコ部長の字だ。
私はその下に、(主にリンコ先輩とユウカ先輩からのメッセージ)と、細マジックで書き加えておいた。
このノートは、未来において、もしスゥィート・メイプル・ムジクが仮に潰えることがあっても、また復活出来るようにと願いを込めて、ユウカ姉様とリンコ部長との発案で作成されたもので、メンバーみんなの直筆のメッセージが書いてあるものだ。
私は、朝練中の皆にそれとなくわかるように、書庫の半ばあたりの本棚にそっと仕舞った。
そのノートに、午後からの授業中にこっそりと書き加えた内容はこんな感じ。
『先日なんだけど、スズカと一緒に帰りのバスに乗ろうとした時に、心臓に病気を抱えている人がいたんだ。
たまたま救急車に乗ってもらうことが出来たから、ひと安心だったんだ。
そして今日、教頭先生からこんな言葉をもらったんだ。
誰かを助ける事や、何かを大切にする事と、音楽を真心を込めて届ける事はすごく似ているって。
それは目には見えないかも知れないけれど、心に触れた確かなものは、ずっと残り続けるって。
私ね、その言葉がすごく心に響いたんだ。
音楽と人を助けることって、誰かに何かを届けるって意味では、本当によく似ているのかもしれないね。
今の私は、将来は看護師になるのも良いかなって思ってる。
でも、もし看護師になっても、音楽もしていきたいなって思ってる。
だって、私にとっては音楽はとても大切な、誰かに何かを届けるツールだから。
二足のわらじって難しいかもしれないけど、前例がない訳じゃなさそうだしね。
それから、先輩たちから受け継いだ、
暖かい『音』をあなたに。
優しい『音』をあなたに。
美しい『音』をあなたに。
この意味を、これからも大切にしていきたいと思います。』
今日の私のこの言葉も、きっと未来の誰かに届くよね。
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