卯月双子姉妹

23/25
前へ
/102ページ
次へ
 そのキャンパスノートの表紙には、 『スゥィート・メイプル・ムジク』  と、丸こい文字で書いてある。 リンコ部長の字だ。  私はその下に、(主にリンコ先輩とユウカ先輩からのメッセージ)と、細マジックで書き加えておいた。  このノートは、未来において、もしスゥィート・メイプル・ムジクが仮に潰えることがあっても、また復活出来るようにと願いを込めて、ユウカ姉様とリンコ部長との発案で作成されたもので、メンバーみんなの直筆のメッセージが書いてあるものだ。  私は、朝練中の皆にそれとなくわかるように、書庫の半ばあたりの本棚にそっと仕舞った。  そのノートに、午後からの授業中にこっそりと書き加えた内容はこんな感じ。 『先日なんだけど、スズカと一緒に帰りのバスに乗ろうとした時に、心臓に病気を抱えている人がいたんだ。 たまたま救急車に乗ってもらうことが出来たから、ひと安心だったんだ。 そして今日、教頭先生からこんな言葉をもらったんだ。    誰かを助ける事や、何かを大切にする事と、音楽を真心を込めて届ける事はすごく似ているって。 それは目には見えないかも知れないけれど、心に触れた確かなものは、ずっと残り続けるって。 私ね、その言葉がすごく心に響いたんだ。 音楽と人を助けることって、誰かに何かを届けるって意味では、本当によく似ているのかもしれないね。 今の私は、将来は看護師になるのも良いかなって思ってる。 でも、もし看護師になっても、音楽もしていきたいなって思ってる。 だって、私にとっては音楽はとても大切な、誰かに何かを届けるツールだから。 二足のわらじって難しいかもしれないけど、前例がない訳じゃなさそうだしね。 それから、先輩たちから受け継いだ、 暖かい『音』をあなたに。 優しい『音』をあなたに。 美しい『音』をあなたに。 この意味を、これからも大切にしていきたいと思います。』  今日の私のこの言葉も、きっと未来の誰かに届くよね。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加