【第二話】ソウジフ

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【第二話】ソウジフ

 甲高く耳障りなアラームの機械音で、ソウジフは目を覚ました。深くため息を吐いて、暗闇の中立ち上がる。2時間の仮眠では疲れが取れない。硬いベッドに横たわっていたせいか、背中も痛む。  灯りをつけると、コンクリートの無機質な部屋がぼうっと浮かび上がった。ソウジフは俯いたまま、のろのろ着替えを済ませる。仕事中は薄緑色の作業着に帽子、顔にはマスク、両手にはゴムの軍手。ソウジフの好き嫌いに関わらず、仕事中の服装は決められていた。傍らのバケツと懐中電灯とを手に取る。バケツは真っ白い塩でぎっしりと詰まっており、中央にはオレンジ色の塗料が剥げたスコップが突き刺さっていた。  ドアを開けて廊下に出たソウジフは、懐中電灯の灯りをつけた。湿っぽいコンクリートで四方を囲まれた廊下には、一応蛍光灯が点在している。だが、それだけでは前へ歩くにも覚束なかったのだ。ソウジフの他に誰も歩いていない廊下では、その足音が一際大きく響いて聞こえ、腕の懐中電灯と一緒に大きな影がゆらゆらと揺れた。
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