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解禁日が近づいていた。
その日を目前に控えると、今まで忸怩たる思いで過ごした年月が、短くも感じられた。
しかし。
「実際、長かったと思いますよ」
「気が短いのだ、お前は」
「そうでしょうか。余計な苦しみを人々に与えたのではありませんか。今では皆が、祭りの様に破滅の言葉をつぶやくまでになっている」
「本気ではないさ」
「いえ。心の奥底では、それを望んでいるという現れですよ」
「それでも、皆とは言えまい」
「ほぼ皆、でも、同じことです」
「判った、判った」
声の主は私をからかうように、それでいて慈悲深い笑みをこぼした。
「解禁日は明後日だ。お前の好きにやるがよい」
「御意」
私は少し気取ってそう言った。
いくら改心させようとしても聞く耳を持たなかった彼らだ。
良きものが虐げられ殺されていく姿をどれだけ目にしたことか。
私利私欲を捨てられず、仲間でさえ殺しあう彼らを相手に、すでに躊躇する気も失った。
それ程の長い時を経た。
明後日、人間への総攻撃が解禁される。
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