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七成委員会
「これより七成委員会を開会する。出席を取る。先導七成」
「はい」
先導七成が背筋と同じくらい伸びた声で返事をした。木製の八の字脚に灰色の座面、それが緩やかにカーブしていて落ち着いた雰囲気の椅子に座っている。
「おいちょっと待てや」
その隣でえらく背の高い椅子に座っていた悪態七成が声を荒げた。
「なんでこいつが最初に呼ばれんだ? あ?」
「少し黙っていてくれないか。君が口を開くと進むものも進まなくなる」
「そりゃどういう意味だ堅物不器用! 一番初めに呼ばれたからっていい気になってんじゃねぇよ」
小競り合いが始まる。それに対し周囲はまた始まったとばかりに特に気にしていない様子だ。怠惰七成なんてこんなうるさい中でもお腹が規則正しく動いているし。
「怠惰七成」
赤く大きいビーズクッションに埋もれていた怠惰七成からの返事はなく、鼻の孔が見えた。カラカラと背もたれのない簡易的な丸い椅子の音を立てながら楽観七成が近寄っていった。しかし、「真っ青な顔して白目向いているけど、まぁ大丈夫だな」とすぐに離れていった。
「大丈夫じゃない、起こしてくれ楽観七成」
「はぁ~い」
「次、臆病七成」
こちらも返事が返ってこなかった。球体で中がくり抜かれているところに縮こまっていてわざと目を合わせないように下を向て座っていた。
「粘着七成」
「ぬぁい……」
椅子の上で体育座りをしていた粘着七成が気だるそうな声で返事をした。黒いメッシュの背もたれが長く、ひじ掛けがない。一番低くしているのか、他の人たちと頭の位置がだいぶ違っていた。
真っ白の空間にそれぞれが専用の椅子に座ってわいわいしていた。「静粛に願う」の一言でぴたりと止む。そしてまるで焚火を囲むように丸くなって位置しているのを見まわしてから話し始めた。
「さて、今日の議題だ。『素子に振られた。その時に言っていたことについて』メンバーの皆の見解を」
「ではここは私から」
「私から、じゃねーよ、気取ってんじゃねぇ」
悪態七成の横やりを無視して先導七成が天井から糸で引っ張られたかのようにすっと姿勢よく立ち上がった。
「素子が私もとい、僕を昨日の放課後に教室で言い放った『私はあなたがわからなくなった。だから別れましょう』。私からするとあれは向こうが知る努力を怠ったからだと推測する」
「推測なんて意味ねぇんだよ。あんなブスこっちから願い下げだっての」
「ていうかどうせ学生でのお付き合いでしょ、こんなことなんてざらでしょ。ねぇそれよりジュースないの? みんなでお話でもしようよ」
「楽観七成、お話なんてしている暇はない。僕は素子がいないと生きていけないんだ。きっと彼女は僕のことを嫌ってはいない、そうに違いない。だからはやく関係を修復しないと」
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