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「まぁ振られちゃったものは仕方がないよ」
「ねぇねぇ、なんで振られちゃったの?」
「……さぁ、『私はあなたがわからなくなった。だから別れましょう』って言われた」
「つまり?」
「何が?」
「いや、理由。聞かなかったの? 『何がわからなかったのか、教えてくれないか……』って」
「クソも似て、ねぇな」
「出た、口悪ナナセかな?」
「……うるせー」
けらけらと見た目不相応の笑い方で満足そうに微笑む明楽と、なぜか若干嬉しそうににやけている天希。2人からはその一面を全面に出した方が面白い、人気者になれると言っているのだが僕はそんなこと望んでいない。
例えば教室のど真ん中で悪態をついたらどう思われるか。普段おとなしそうにしているのに突然の癇癪。変人か情緒不安定な奴なのかと誤解されるに決まっている。
そうならないためにも自制しているのだが、どうにもこの2人はそれを公に引き出そうと奮起している。そしてまずいことに、この2人と話しているとうっかり色んな七成が出てきそうなのだ。
「それでそれで、何で聞かなかったの?」
「何でって別れるって決断したからいってきたわけだし、聞いてどうこうなる話しでもないし」
「気にならないの?」
「まったく」
「私は気になる」
「ただ冷やかしたいだけだろ」
「そんなことないもん。ちゃんと暖かい気持ちを持って馬鹿にするもん」
今日も明楽は絶好調だった。それもこれも元をたどれば高校の入学式、たまりにたまった感情が爆発しそうになったので家に帰る前に陰で発散したのが原因だった。そのときに天希と明楽にみられたのが始まりで、引かれると思ったが……いや、ひかれたはひかれたが惹く方だった。
「で、思い当たる節は?」
「ない」
「ないわけないでしょ。なんかあるでしょこう、なに、わからないけど」
語尾の方がだんだんと小さくなっていく。「恥ずかしいなら訊かなければいいのに」と天希がぼそっとつぶやいた。
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