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「あ~き~ら~?」
「ごめんって。でも素子ちゃんとせっかく仲良くなったのに、ナナセと別れたからって疎遠になっちゃうの、嫌なんだもん」
卑怯な手口でせめて来やがった。いい意味でも悪い意味でも素直で自分中心に考える。おそらくこの手口で部活途中のジャージ姿のまま連れ出してきたのだろう。
さて、こうなってしまったら公開処刑である。善意と悪意の塊をミキサーで調理したミックスジュースが身体に流れている明楽の尋問が始まるのだ。そして素子は羞恥という感情が欠けているのか、どんな質問でも答える。よく言えば素直、悪くいえば無神経、そんな人なのだ。
「ねぇ、なんで素子ちゃんは七成と別れちゃったの?」
「七成くんのことがわからなくなってしまったから」
「それってどういうこと?」
「私が好きになった七成くんがいなくなっちゃったから」
「迷子いや……人違いだったってこと? あ、期待はずれ!」
「いい笑顔で人に指を指すな」
つかんでへし折ろうってやろうとすると素早い動きで引き、素子の後ろに隠れるように身を隠していた。
「でもそうですね、何事にも一生懸命であろうとした初々しい七成くんも好きでした」
「なるほど、童貞好きだと」
「おい」
「つまりは……はい、そうですね」
「ちょ、肯定すんな。そして誤解を招くような言い方すんじゃねーよ」
「おぉこれは失礼しました皇帝陛下、ははぁ~」
「不名誉極まりないから礼拝をやめろ下を見るな」
天希も隣で微笑んでないで止めてくれ、と頼んでも「ん~?」とすっとぼける。まるで幼稚園児のおままごとを公園のベンチで眺めているような目はやめろ、警察に通報するぞ。
「だから七成くんのことは今でも好きなんです」
「あれ、これけなされてる?」
「煽ててます」
「……はぁ」
「あ、照れてる照れてる」
「うるさいよ」
「今でもやり直したいって思ってるくらいで」
「うわ耳真っ赤」
「こ、こっちみんなばーかばーか」
今度はこっちが下を向く番だった。
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