解禁

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「あー、こればかりは絶対やめられないな」 朝起きるといつもタバコを吸いたくなる。 こればかりは気分のいい夢をみたとしても断ち切れない習慣だ。 血は争えない。 と常々思う。「タバコをやめるのだったら死んだほうがマシだ」と父は母が禁煙を口にするたびそのように毒づいた。 毎日一箱以上吸うので風邪をひきやすくなり何度かやめようと試みたことがあったが、パチンコ中、麻雀をしていてツイてない時、どうしても吸いたくなる。 人はいつでもツイてる状態が続くワケがないのだ。 「私が処方する薬を飲み続けて下さい。少しずつストレスは軽減されます」 先生はあっさりとそう言い放つと後は用がな いと言わんばかりに机に向き返った。 俺はなんとも不快な気分にさせられたが先生の処方するは確かに眠りにつけるし朝はかつてないほど快適なので文句は言わずにいた。 薬を処方されて次の日、また次の日と体は健やかで足が軽く、日に日に健康体に向かって行くのがわかると何だかタバコやギャンブル、お酒に頼り、ストレスを発散するのがバカバカしく思えた。 「そうかストレスフリーの健康体ってこんなに素晴らしいのか!!」 すっかり自分の中で変わってしまったストレスの考え方と目に見える世界の輝きが新しい自分の扉を開けたのだ。 「先生!先生の処方されるお薬、ホント素晴らしいです。すっかり健康でストレスフリーになりました!」 俺は興奮気味に先生にそう告げると先生は何を思ったか 「では、もう薬を処方する必要はないですね」と笑顔で言う。 そして続けて「これが最後の処方薬です。こちらの店を訪ねてみてください。きっとストレス解消になりますよ」とチケットをさしだしてきた。 「はい!先生がそう言われるなら間違い無いんでしょ。ありがとうございます!」 ここまで健康な体にしてくれた先生の言う事だ。きっと間違いがないのだろう。 そう思い素直にチケットと指定された場所に早速行ってみることにしたのだ。 「先生。彼、結構時間かかりましたね」 先生の助手の女が颯爽と病院を出ていくのを見定めてから小声で言う。 「ああ、処方した薬で随分赤字だよ」 先生はやれやれといった表情でコーヒーを口にした。 「もう少し薬代を高くすれば良いのでは?」 と助手は言うが、返す言葉はいつも決まっていた。 「まあ、果報は寝て待てだよ」 助手は毎度のことだけど呆れた表情で 「お疲れ様です」とだけ言い残して部屋を出ていったのだった。 ストレス外来 あらゆるストレス発散法を試したが結局サウナが一番だと気付いたのは三年前のことだった。 薬を処方して僕が経営するサウナ店に導いてあげることが悪いことだとは思えなかった。 むしろ酒、タバコ、ギャンブル中毒をサウナ中毒に変換してあげたのだから感謝してほしいものだ。 終わり
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