ヒナタ、ケーキ屋に3

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ヒナタ、ケーキ屋に3

 さて、ヒナタの配達デビューの日である。  今日は自分で作ったショートケーキを配達する。  製菓衛生師の資格を持つリンコさんがヒナタの作ったショートケーキを見て、ほうとため息をついている。 「一番基本的かなと思ってショートケーキの作り方を練習してたんですけど、まだまだですよね?」とヒナタは謙遜するが、リンコはそんなこたないと言う。 「ショートケーキって実は難易度高いんだよ。それをラクラクこなすなんて、ゲームとかプラモデルが好きらしいけど恐ろしいくらいに職人肌じゃない?」 「い、いやあ」  ショートケーキをバンに積み、アオイとシバ、そしてヒナタの三人で配達することにした。  配達場所はカラオケ店で、依頼主は若い女性たちだ。カラオケ店の了承も得てサプライズで配達するらしい。  サプライズ用に動物の被り物をかぶった三人がケーキを届ける。 「これって?」  被り物はヒナタもハマっていたあの村づくりゲームのキャラだった。  ミニパーティーの主催者がマイクを握り「ハッピバースデー、アミちゃん」と喋る。  祝福ムードの中、熊の被り物をしたヒナタはケーキを室内に届けた。  アミちゃんは嬉し涙を流していた。  帰りの車中、シバは満足そうに言った。「今どきこんな充実した仕事ってないっすよ。自分、前は自転車で飯を配達してたんですけど、あれはキツかったっすねー。同じような食べ物を配達するのでもこんなに違いが出るなんて」 「みんな生きてるんだもん。祝福されたいでしょ」   車窓の外を眺めながらつぶやくアオイにヒナタは心の中でこっそり訪ねた。 「アオイ?あなたも誰かに祝福してほしいの?」  するとアオイがヒナタのほうに振り向いた。ヒナタは心の声を聞かれたのかと思いドキッとした。 「ヒナター。あんた被り物のなかで泣いてたでしょ?もらい泣き?」 「な、泣いてないもん」  社内はハッハッハッハーという笑い声で溢れた。   
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