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おばさんのラララ
「どうされたんですか?」
「このカタログに載っているケーキの写真が美しすぎて思わず」
「このケーキはね、最近入った新人の子が作ったんですよ」
「そうなの。まさか私もケーキに泣かされるとは思わなかったわ」
「僕もケーキで泣く人を始めてみました。よろしければ中に入って試食でもしてみませんか?」
シバはケーキで泣くおばさんを店内に招いた。
店に入るなりおばさんはラララー♪と歌い出した。
「どうされましたか?」
「はあ、すいません。つい。私は昔ちょっとしたジャズ・シンガーだったんですよ。はい、わかってるんですよ。ここはケーキ屋さんって。でもなぜかこのお店の楽しげな雰囲気に引っ張られちゃいました」
「ではあのケーキを作った新人さんを紹介します」
「ヒナタです」
厨房からヒナタがひょこっと現れた。
「ちょうど店頭販売用に作ったケーキがあるんですが、どうぞ」
ヒナタはモンブランケーキを一つ持ってきた。
モンブランケーキの形ははもともとフランスとイタリアの国境にそびえるモンブラン山に似せたものと言われているが、ヒナタのモンブランケーキは天国と地上の間にある架空の山を意識した2色のモンブランケーキである。
そのモンブランケーキを見たおばさんは「わあ!」と声を上げまた泣いた。
「仏像を彫る人は、最初からそこに仏像の形が見えていると言います。あなたきっとそういう人なのね」
ヒナタは自分が芸術家のように褒められていることに気恥ずかしさを覚えた。
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