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ヒナタ2
ゲームの進化はめざましい。これほどまでに現実を忘れさせてくれる、いやむしろ自分が望む現実を見せてくれる代物はあるまい。ヒナタはそうまで思っていた。
そんなヒナタにとって悲劇が訪れた。まさか最新のゲーム機には有り得ないような事態が起きた。
「せ、セーブデータが消えた……」
そう今までこつこつとやり込んできた村づくりゲームのセーブデータが消えてしまったのだ。
「あ、ああ……」 ヒナタにとってそれは単なるデータではなく、大切な心の営みにさえなっていた。
呆然自失としたヒナタの耳にカタンとした音が飛び込んできた。郵便受けに何かが投函されたようだ。
「チラシ?ま、まさかセーブデータが復活できる裏技なんて書いてないよね?」
"バースデーケーキ配達します"
投函されたチラシにはケーキの写真とともにそう書かれていた。
「そ、そういえば、ゲームのお誕生日イベントももうすぐだったな」
ヒナタはチラシにあったバースデーケーキを配達してもらうことで、セーブデータ消失の傷を埋め合わせようと決めた。"その日"まではしゃんと生きるために。
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