ヒナタ3

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ヒナタ3

 インターネットが生活に浸透するのと同時に電話が苦手な人が増えた。ヒナタもその一人だ。なにかしら注文やら予約やらをするのもネット。そっちのほうがストレスがない。 しかしバースデーケーキのチラシには電話番号しか載ってない。QRコードをスキャンしてそっからワンタッチでケーキ注文できないものかとヒナタは一瞬思った。  しかしだ。チラシをよく見ると丸いフキダシのなかにパティシエの顔が載っている。アオイと紹介された目つきの悪いパティシエの女! なぜかこの女につながるならば電話も悪くないと思えた。 「もしもし」 「こちら、ケーキ配達専門店ヴィーナスです。ご注文ですか?」 「は、はい。ひとつ注文したいんですけど」 「かしこまりました。お誕生日当日の配達でよろしいですね?日にちとご住所、お名前をおねがいします」 「えーと日にちは○月☓日で、住所は△△町一丁目、名前はヒナタです」 なんとか注文できた。ヒナタは自分の社会人レベルが少し上がった気がした。
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