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ヒナタ4
それからの数週間はある意味空白だった。ゲームの世界なら、時間をかければポイントがいくらでも稼げる。そのポイントを使って自分好みの村をいくらでも作れる。現実は違う。生身の体力とか限られた時間を切り売りして与えられるポイントでは最低限の住処と食料とささやかな娯楽に還元すればそれっきり。
ならば自分なりの想像力の世界が広がる村づくりゲームに投資してよかったとヒナタは思った。
そしてヒナタは思い立った。「もう一度セーブデータを作ればいいじゃん」
しかし新しく作ったセーブデータで一度プレイしたストーリーを反復し、ポイントやアイテムを集め直すのは思いの外楽しくはなかった。
「なにも驚きがない。もし人生に生まれ変わりがあったらこんな感じなのか」
そうして退屈なやり直しゲームを繰り返し誕生日当日がやってきた。
一度はゲームの喪失をケーキで埋め合わそうとしていたが、ふたたびゲームの世界に帰ったためにケーキを注文したことを忘れかけていた。
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