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ヒナタ5
誕生日当日。ヒナタはケーキが届く時間を忘れコンビニに外出していた。
電話が鳴ったのはコンビニでカップ焼きそば(激辛。Youtuberがよく食べている)を買って店を出た直後だった。
「もしもしお約束の時間にうかがったのですが、お留守でしたので」
「あ、わわ。すいませんあと三分したら行きます」
ヒナタは何年ぶりかというぐらいに全力疾走した。ゲームかケーキかでもやっていた頭がケーキになった。
空想の世界に築く楼閣としての快より、生き物としての原初的な快(糖!甘!)のほうが勝るのかとヒナタは走りながらそんな気分になった。気分はまるで果実にかじりつく密林の虫だ。
ゲームのセーブデータが消えてから、想像力は暴走気味なようだ。
玄関の前であの写真の目つきの悪い女がケーキの箱を持って待っていた。
「はあ、すいま…」
「とりあえずお誕生日おめでとうございまーす。お家のなかまでお運びいたします」
ケーキ屋の女は低く気だるい声で事務的に言った。
これはなんなんだ?”生まれてきたことを祝福される”ってお金で買えるものだったんだ!ヒナタはやや混乱気味に自宅のドアを開けた。
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