1人が本棚に入れています
本棚に追加
祭りのあと?
一人きりのバースデーパーティーはあっという間にオワタ。とヒナタはごみを片付けながら呟いた。やり直したゲームのなかのバースデーパーティーもポイントが足らないせいで、ささやかなものだった。
「セーブデータが消えてなかったら、もっとすごいパーティーだったのになあ」
アオイというミニ台風が去ってから、ヒナタのゲームライフも変わっていった。正確に言うとやっていることは前と変わらない。習慣的にゲーム機の電源をオンにして、仮想の世界でアイテムを集め、消えてしまった村を記憶を頼りに再建する。
画面の向こうでは犬やサルに似たキャラクターたちが村の住人として、議会に参加している。架空の村で話題になっているのは水問題だ。
ある者は「憩いの場として噴水を作りたい」といい、またある者は「いまは噴水に使える水などない。使える水は生活に回すべきだと言う」
こうなったのも、すべてはプレイヤーでありこの村の最終決定権を握っているヒナタのせいだ。
一回やり込んだこの手のゲームをまた一からやり直すのは正直だるい。ヒナタはゲームのなかで悪魔と契約した。
悪魔は、こういった。高いポイントを払うかわりに急速に村を発展させると。ただしそこには条件がある。
その条件は悪魔とのギャンブル勝負に勝つこと。ある種のギャンブルゲーム、それらは実力より運で結果が決まる。
ヒナタは運がなくギャンブルに負けた。そして村の水源を強欲な悪魔に売るはめになってしまったのだ。
ただしそれはゲームのお話。気だるい繰り返しやちょっとした生活の変調により以前ほどバーチャルにリアリティを感じなくなってしまった。いくらバーチャル世界の出来がよくても、それは電源を消せば眼前からなくなってしまう!
「そろそろ村づくりも終わりかな」
脳裏にアオイが嘲笑する声が蘇る。
そんなヒナタの目にニュースの見出しが刺さってくる。
ヘイトクライム、分極化、暴動、政治テロ、そして孤独死。
そしてそんなニュースが踊るのを、そこそこ安全な社会で見ながら仮想の世界で生きる自分。
ゲームの世界なら、うまく行けば何もかもがハッピーエンドなのに。
ガチャが外れまくったこの世界のまずい空気に触れるため外に出たヒナタのスマホが鳴った。
「この電話番号はまさか?」
最初のコメントを投稿しよう!